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好きになれないハンバーガー


 戦前は天皇制が頭の上にのしかかって息苦しい思いをした。私は右足がないために、ことごとに無視され、昭和天皇が天皇になって初めて渡道したさいも、松葉杖で出迎えるのは失敬だから家へ帰れといわれた。小学校一年生だったから事の真相はよく判らないが、何かイヤな感じがした。
 戦争に負けると、障害者の私にもようやく市民権が来た。まさしくようやくである。新憲法を見て、私はこれはいいと思い、これから日本は平和国家、文化国家として生まれ変わると思った。ところが朝鮮半島で戦争が始まると、がらりとアメリカの態度が変わって日本に再軍備を強要した。このときから今度はアメリカが天皇制に変わって君臨し、日本政府にいろいろ注文をつけた。
 ドイツの哲学者、ヤスパースは戦争に負けたことは、負けたという事で罪なのだから罪に服さねばならないといった。それはその通りだろう。しかしもう戦争に敗れてから五十年もたったのに、沖縄はいつまでアメリカの基地でなければならないのか。また内政干渉して文化までアメリカ化することをあおった。教育制度がその一つだ。
 生活や政治や文化までアメリカ化する前に、日本人は日本人独自の方法で戦争を反省し、アジアの周辺諸国に謝罪する方法が考えられなかったのか。謝罪の仕方までアメリカにいいように扱われたことがふしぎでならない。
 私がどうしても好きになれないのは、巨大なアメリカのハンバーガーだ。まるで靴の底のような分厚い食べ物で、奥行きのない日本人の口にはありあまり味も悪い。このあつかましい食べ物がアメリカの強引さを物語っていると思う。
 このハンバーガーに似ているのが新ガイドラインで、これは将来の日本のためになる食べ物と思っているのだろうか。一つ間違えばアジア諸国からの「反日」ではなく「棄日」になるかもしれないことを日本政府はまじめに心配したらどうだろう。
(北海道新聞 立待岬より 平成11年3月27日)



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