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マコガレイ

 このごろ寿しやへ行くと、関さばとか、関あじとかがあって、にぎってもらうと、やはり一味ちがう。
 もう一つ美味なものに、同じ大分県の日出(ひじ)町の「城下鰈(しろしたがれい)」がある。現地でなければ食べられず、市場価格キロ六千円から八千円というから高級品でトロ並みだ。まだ私は食べたことがないが、この間、北大水産学部教授高橋豊美先生の講義を聴きにいったら、木古内湾のマコガレイの刺し身をごちそうになった。活じめにしたのを講座の学生さんが刺し身におろしたものである。身が厚く、こりこりして歯ざわりよく、舌に美味であった。これがカレイかと思った。
 普通、マコガレイは学名Mud dab(どろがれい)というように海底の泥に生息している。陸奥湾のマコガレイがそうで、泥臭く味も落ちる。それが津軽海峡は潮が速いので海底は砂場になっており、ここにすむマコガレイは泥のにおいもなく、味も美味とわかり、にわかに注目された。
 しかもその美味な木古内湾のマコガレイは津軽海峡を渡って他の場所へ移動せず、根付きの魚であることがわかった。いま木古内の漁師たちは、この美味なマコガレイをそう売りだすか考えているという。
 ネーミングが大事だが、シリウチガレイでは王者の風格がない。そこですこし長くなるが、シリウチマコガレイとしたらどうだろう。
 売り出すには函館市内の寿し店におろしシリウチマコガレイとして、にぎりよし、刺し身よしとキャンペーンをすることだ。これだけの身の厚い、美味なカレイはだれも知らないのではないか。
 昔、大谷光瑞という食通の坊さんがいた。彼は函館にきて、上磯の赤貝、江差のひらめは天下一品といった。木古内湾の砂地で育ったマコガレイを食したら何といったろう。
 余談になるが、シリウチマコガレイはフランス風料理に仕立てることもできそうだ。
       (立待岬・北海道新聞道南版/平成十年)

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