朝の食卓

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朝刊コラム
「朝の食卓」


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父との写真

昭和59年5月
父と鎌倉にて


家族写真


 朝5時、夫の「起きろ、写真を撮りに行くぞ」の声で息子ふたりが目をこすりながら、ベッドから起きてきた。着替えて家族4人で家の近くの交差点の歩道で写真を撮った。
 夫は三脚をセットし、何度もアングルをチェックした。背景には札幌ドームが見える。と言ってもこの話は1999年7月のことで、外観や屋根の部分の骨組みがやっと見えはじめたころ。ドームに通じる歩道橋もまだない。長男が中学2年生、次男は小学校3年生で、寝ぐせで髪の毛が立っている。国道36号線の車の往来が激しくなる前に、写真を撮りに行くと夫が言いだし、慌てて準備し眠そうな次男の手をひっぱって移動したのだ。この写真を引き出しの整理中に見つけた。
 今年、札幌ドームは開業15周年でメモリアルフォトコンテストと題して写真を募集している。残念なことにわが家のこの写真は、17年前のものなので応募できない。
 17年前の朝早く、家族を起こして夫が写真を撮った訳は、当時、JR北海道が青函トンネル吉岡海底駅のメモリアルボードに展示するための写真を募集していたからである。しかし、このボードは北海道新幹線の開通に伴い、吉岡海底駅が廃止となり見学できなくなった。いつかみんなで見に行こうと言いながら、実現しなかった。
 息子たちも社会人になって家を出てしまったが、毎年4人そろって写真を撮ることは今も続いている。
(2016年9月2日 北海道新聞全道版)


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