朝の食卓

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朝刊コラム
「朝の食卓」


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父との写真

昭和59年5月
父と鎌倉にて


墓参り


 函館の外国人墓地の近くに実家の墓がある。眺めが良く私の好きな場所のひとつだ。函館どつく前で市電を降り、魚見坂を上って行く。函館の西部地区にはたくさんの坂があるが魚見坂は山に向かって一番右側にある坂で、魚群を望むことができて名づけられた。
 この坂の途中に何軒か花屋さんがあり、いつも花を買って墓参りにいく。天気のいい日には観光客を見かけることもある。著名人の墓を見てまわる、はやりの「墓マイラー」なのだろうか。この辺りに日本の地震学の父と言われた英国人ジョン・ミルンとその妻で幕末に函館で生まれたトネの墓もある。
 実家の墓は私の四代前の高祖父が近江出身の人で、墓石となる自然石を和歌山から船で運んできて建立した。子どものころはお盆のときに墓参りをして、その後に家族そろって外で食事できるのを楽しみについて行った。だから周りを見渡したこともなかった。札幌で暮らすようになり墓参りの足も遠のいていったが、父と母が亡くなり、納骨してからは私にとって大切な場所になった。年に3,4回、墓参りのために函館に足を運び、ひとりでゆっくりと歩きながら景色を楽しむ。
 ここから見下ろす海や遠くに見える横津連峰の山々の景色に癒やされ、墓参りをした後はいつもまた「頑張ろう」という気持ちになれるのだ。ときには長い時間、父と母に話しかけることもある。
(2015年6月2日 北海道新聞全道版)


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