コラムあれこれ |
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ローマはどうして世界制覇が可能だったのか、という視点からつねにローマ史は書き始められるが、それはローマが、ギリシャの知恵に劣り、エトルリヤのような高度の技術力もなく、カルタゴのような経済力もないのに、世界制覇ができたからである。 その秘密は何か。それは政治である。ローマ人は先天的に、政治感覚があったのである。 日本人が劣っているのは、このローマ人の長所ともいえる政治的感覚である。しかし、この政治的感覚はかんたんに身につかない。ローマ建国の伝説にもあるように、ローマは略奪した異民族の娘たちを奴隷とせず、妻にしたように、異民族の人権を踏みにじらなかった民族なのである。 これが、共和制を持つことができた唯一の秘密であり、彼らの政治的感覚の基本には、この人権尊重があったのである。 日本は経済で世界に君臨しつつあるが、政治では、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカに遠く及ばない。日本の建国神話は、夷狄を成敗するいう形をとった侵略であり、権力者はいつも先住民や常民を圧迫するか、支配するしか考えない。 そういう仕組みが、いまも政治の世界に流れていて、自民党も社会党もそして、その他の政党も、政治の本質については何もわかっていない。その証拠に、日本には、いまだかつて政治を分かりやすい形で身につけて演説できた党首のいないことである。 (いさり火・北海道新聞道南版/平成六年頃) |