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朝の食卓

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朝刊コラム
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父との写真

昭和59年5月
父と鎌倉にて


痛み


 昨年秋からつえをついて歩いている。左膝半月板損傷で内側の半月板が砕けた。原因は分からない。スポーツもしてないし、転んだ記憶もない。ただ歩くことが好きなので歩き過ぎたのかもしれない。手術をするか、リハビリを続けるか悩み、答をだせないでいる。
 階段の昇り降りができず、地下鉄駅ではエスカレーターを使う。階段になる所は遠回りしてエレベーターを利用している。何をするにも今までの倍の時間がかかる。
 今膝の周りの筋肉を鍛えるリハビリに取り組んでいる。1年前、腰を痛めた時も腹筋がないために腰痛を繰り返すと言われ、腹筋と背筋を鍛えるメニューを作ってもらった。50代になり急に筋力の衰えを感じ、筋肉がいかに大切か思い知らされた。私の生活は変わり、苦痛を伴うこともあるが私は「痛い」とは言えない。
 私の父は2歳の時に結核性関節炎になり、7歳の時に右足を大腿部から切断した。二・二六事件の年だった。父が片足だと気づいたのは私が5歳の時だった。ある冬の朝、石炭ストーブの前に革と金属でできた義足が置いてあった。私の前ではいつも義足をはめていたので、初めて片足のない姿を見て私は泣いた。
 片足であることで多くの差別と苦痛を味わってきた父を思うと、今でも私は多少の痛みには耐えなければならないと思うのだった。
(2015年4月15日 北海道新聞全道版)



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