朝の食卓

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朝刊コラム
「朝の食卓」


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父との写真

昭和59年5月
父と鎌倉にて


鰹節


 子どもの頃、鰹(かつお)節を削るのが私のお手伝いのひとつだった。木製の箱でふたをあけるとかんな台があり、削った鰹節は下にある小さなひきだしに落ちていく。だしをとるときやおひたしには、必ず削り器で削った鰹節を使っていた。
 鰹節は頭や内臓をとったあと、生かつおを煮て、天日干しして、いぶして乾燥させるという実に手間のかかる食材である。暮れになると、祖母が乾物屋さんに鰹節を買いにいくのについて行ったが、その時は木っ端のように見えるものがどうして高価なのか理解できなかった。
 2月に足を骨折して今もリハビリ中の私は、筋肉を増やし、骨をつけるために、どんな食事をしたらよいか気にかけている。タンパク質を多く含み、ビタミンやミネラルがバランスよく含まれている鰹節は、今の私には大切な食材のひとつである。
 息子たちが独立して夫婦ふたりの生活になって、食事の支度を手抜きするようになった。だしもインスタントを使うことが増えていたが、60代を迎える前に自分の食生活を見直してみようと思っている。
 40年以上前の祖母と暮らしていたころの日々は、丁寧に暮らしていくことの大切さを教えてくれた。手間を惜しまないだしのとり方や、食事の支度は健康的な生活につながる。祖母は私の両親よりも長生きした。
(2016年6月21日 北海道新聞全道版)


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