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娘のつぶやき

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◇娘のつぶやき


父との写真

昭和59年5月
父と鎌倉にて


十月六日

 父の文章を載せるために、いつものようにタウン誌や新聞の切り抜きなどをひっくり返し見ていると、1997年10月号(No.422)のタウン誌「街」にSさんがこんな文章を書いていたのを見つけた。
 《……うちのボスが、10月6日(月)から道新函館版に「海猫、飛ぶ」という小説を連載することになった。テーマは高校生の友情と苦悩。かつての自分の少年時代を思い出しながら、受験勉強をボイコットした、詩人になりたい少年と画家になりたい少年が登場する小説を書いたのだという。挿絵は箱根寿保さんです。乞う、御期待。》
 これを読んで、私はどこかで見たような気がして抽斗の中を探してみると、52回に亘って連載された新聞の切り抜きがあった。金色のきれいな紐で右綴じされていたが、なぜか12回目からで最初の11枚がなかった。新聞には赤いボールペンで日付が書いてあった。母の字である。
 いつものことだが、この連載小説も私は読んだことがなかった。パラパラとめくってみると箱根先生のカラーの挿絵が毎回載っていてなかなか豪華な連載である。箱根先生のことは父から昔、名前は聞いたことがあったがお会いしたことはなかった。ただ、今年七月、函館で『タウン誌「街」でたどる函館』という展示会を開催したとき、長い間、表紙の絵を描いてくださった箱根先生の原画を見せていただいた。スミ一色の原画は色数がないのに、どこか暖かく、ほっとするものばかりだった。

  連載終了の日に箱根先生のコメントが載っていて、それによると新聞のカラー面は全体に色数が多いので、青を基調に三色くらいに抑え、線の強弱により表現するカリカチュア風に統一したと書かれていた。「なるほど」と思い、もう一度挿絵を見てみた。実際と新聞の紙面に刷り上る色とは違いもあり苦労も多かったと思われた。また、父も52回という新聞小説の難しさを語っていた。漱石の「こころ」のように一人の人間を中心に、一つのテーマを掘り下げていくと内的に深いところまで降りられたが、そうなると華やかさと広がりに欠けてしまうため苦労したと述べていた。
 とりあえず、私は最初の11枚を探し「海猫、飛ぶ」を読んで見ようと思う。ちょうど十二年前の今日から連載された父の小説を。たぶん、連載が始まったとき母から電話で話を聞いていたはずだが、あまりその時のことは覚えていないのだ。父の書くものに興味がなかったからだろう。
 いつか、このホームページで「海猫、飛ぶ」を紹介したいと思っている。



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